イチゴ

朝露を含んだ白い5片の花びらは、清純で愛くるしく幼児の手のひらを思わせます。 雄ずいは5の倍数で20~30本、雌ずいは花床上にラセン状に並び200〜400。 普通、果実といって食べている部分は、花たくの発達したもので偽果、果実に相当するのは果床上のそう(痩)果で、一般に種子と呼ばれているものです。 頂花は栄養条件などによって7~8枚の花弁を持つものが多く、正常花とはいえませんが、果実が大きくも鶏冠状果となります。 2019.4.28
雄しべは5の倍数の30本のようです。 雌しべは花の中央の薄黄緑色した部分(花床=赤いイチゴになる部分)に200~400あるのですね。 赤いイチゴの表面にたくさんついている薄褐色のつぶつぶはタネなんですね。

<現在の栽培種は、南北両アメリカの野生種の交雑になるもの>
野イチゴといわれるフラガリア属の植物は、世界各地に自生していて、ずいぶん古くから人類に利用されてきました。 しかし、栽培の歴史となると他の作物より日が浅く、園芸作物としての地位を確保したのは16世紀になってからです。

現在の栽培種が成立したのは18世紀。 北アメリカの野生種バージニアイチゴと、南米のチリ―イチゴが、新大陸発見後、それぞれヨーロッパに渡りイギリスやフランスで栽培されているうちに交雑してできたものです。

わが国には江戸末期、オランダ船によって伝えられたことからオランダイチゴと呼ばれましたが、当時はあまり普及せず、本格的に園芸種が入ったのは明治以降のことです。 石垣栽培で有名な福羽イチゴは、明治30年代の初期、、新宿御苑で福羽逸人氏がフランスから取り寄せたタネから育成したもの。 大正末期まではもっぱら皇室用として作られ、門外不出だったともいわれています。

<株冷蔵や短日処理で周年栽培>
イチゴの栽培は、甘、酸、香味の合作、ビタミンCの結晶ともいわれ、現代人の嗜好によく合致して消費は年々伸びる一方です。 このように生産が増えたのは、ビニールハウスなどの施設栽培が発達したのに加え、イチゴの生理的な特性を利用した周年栽培技術が確立されたことにほかなりません。 花芽は低温短日になる秋につくられ、冬が来ると休眠、翌春開花結実します。 花芽分化の終わった親株を根雪前に掘り取って、マイナス2℃くらいで冷蔵しておき、翌年盛夏を過ぎたころ植えると、9月末から赤熟したイチゴを収穫することができます。

また、春に遮光を行って、人為的に秋の短日な条件をつくり、花芽分化を起こさせて秋どりする方法も開発されました。 これは道南農業試験場の研究によるもので、低温な北海道ならではの画期的な栽培です。

★栽培一口メモ
品種は宝交早生がよいでしょう。 氏素性のはっきりした、ウイルスの汚染されていいよい苗を信頼できる種苗店か農家から分けてもらいます。 7月中に根づいたランナーから苗と採り、仮植え、または定植します。 根が浅く弱い作物なので有機部のたくさん入った軟らかい土にうえましょう。 肥料が多すぎると、根が傷み生育が悪くなるのでくれぐれも注意。 花芽のでき始める9月までに、がっしりとした大きな株をつくることがコツです。(札幌市農業センター 林 繁)

〇 四季成りイチゴ
今、ホーマックやビバホームで売っているイチゴ苗はほとんどが四季成り性の品種です。 しかし、上述の林さんが書かれたイチゴの話は今から40年以上前のことで、イチゴの品種も一季成り品種のイチゴ栽培についてです。

・一季成りと四季成りの違い
一季成り品種は、秋(低温と短日)に花芽ができ、翌春開花結実する性質、一方、四季成り性品種は温度や日長にあまり左右されずに花芽をつける性質を持っています。 なので、一季成りは1回だけの短い収穫期間なのですが、四季成りは春から夏にかけて比較的長く収穫できるタイプとなります。

現在出回っているイチゴのほとんどは一季成り品種で栽培されたものだそうですが、花芽形成に温度や日長にあまり左右されない性質と、もともと冷涼な気候を好む性質を利用して、北海道でのイチゴ栽培は四季成り性品種の栽培が全国の約半分の面積を占めているそうです。