メネデール

メネデールという園芸資材があります。

名前のメネデールは、「芽」と「根」がでるから「メネデール」だそうです。 この資材の使い方は原液を100倍に薄めたものを、
①樹木の移植時の土壌潅注
②弱った樹木に樹幹注入
③挿し芽、挿し木苗の水揚げ時に
④種まきの植床に
など樹木や草花・鉢花、野菜などの発芽・発根、樹木の樹勢回復などに使います。なかなか便利な資材なのですが、これは肥料ではなく、この商品のラベルには「植物活力素」と書かれています。 植物を元気にする資材です。
それでは、このメネデールの中には何が入っているのでしょうか? 窒素(N)やリン酸(P)などの肥料成分や亜鉛(Z)・ホウ素(B)などの微量要素はまったく入っておらず、微量要素の 鉄(Fe)のみです。
高校の生物の授業で下図に見覚えはありませんか?

この図はドベネックの桶といわれるもので、リービッヒの最小養分率を分かりやすく説明している図です。 桶1枚1枚の板それぞれが窒素やリン酸、鉄やカルシュウムなどの栄養素にあたります。その意味は「植物の生育はその植物に供給される諸養分のうち,その量が最少のものに制限される」というものです。
この説からすると、植物にとって必須の微量要素は鉄以外に7種類あり、それらのどれ一つが欠けても植物は正常に生育しないのです。 鉄だけ多く与えても桶からただ流れ出るだけです。
その意味で、この鉄だけしか含まれていないメネデールという活力剤は植物にとって本当に効果があるのか?と以前から少々疑問に思っていました。
ところが最近、健康に関するページ(ブログ)でこんな図を見つけました。

これは、人間にとって必要な栄養素をビラミッド図化したものです。そのブログのタイトルは「野菜たっぷりなら良いわけではない、糖尿病患者にほぼ確実に不足している”ある食べ物”」というもので、医師の水野雅登氏という方が書かれているのですが、その中で、鉄分に関して以下のように説明しています。

「本来は、鉄はミネラルの一種ですから、このピラミッドでいうと一番上に含まれることになります。しかし、わざわざ別にしているのは、他のミネラルよりも優先順位が高いからです。
欧米などの諸外国では、小麦粉などへの鉄の添加が法律で義務づけられています。他にも、ベトナムでは調味料のナンプラーに、モロッコでは塩に、中国では醤油に鉄添加が行われています。各国が、貧血の予防のために国策として鉄添加を行っているのです。
しかし、日本では、こうした国策として鉄を添加する、ということは行われていません。その結果、多くの国民が鉄不足に悩まされています。しかも、それは貧血と認識されていないことも多々あります。」

水野氏は、人間の体にとって鉄分は他のビタミン・ミネラルより優先順位が高く、必要量が多いと言っているのです。
確かに、鉄は赤血球の材料であり、体内には3~4gの鉄が存在し、このうちの70~75%は機能鉄と呼ばれ、赤血球中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンというタンパク質の構成成分となっており、体内に取り込まれた酸素を全身に運ぶ大切な働きがあります。(大塚製薬  栄養素カレッジより抜粋)

それでは、植物にとって鉄はどのような働きをしているのでしょうか?
植物は、光エネルギーと二酸化炭素と水で有機物のでんぷんをつくる光合成を行っています。その場所が葉緑体で、その中に鉄が存在します。また、植物体個々の細胞は※呼吸をしていて、鉄はその際の酵素運搬タンパク質の合成などをおこなってます。
※呼吸とは細胞の中で有機物(でんぷん)を分解して生命が活動するために必要なエネルギーを作るための働き。 有機物のでんぷんを分解するときに酸素が必要で、分解されると二酸化炭素と水に分解され、その時にエネルギーが発生し、細胞内外で酸素と二酸化炭素の交換が行われる。

このように鉄は動物(人間)も植物も共に酸素の運搬やタンパク質の合成など重要な働きをしているのです。 水野医師は「鉄は動物(人間)にとって他のミネラルより優先順位が高く多く必要である」と言っていますが、上図ベネツクの桶の個々の板(窒素やリン酸、鉄や亜鉛などの栄養素)の天端は同じ高さなので一見量も同じだと錯覚してしまいそうですが、それぞれの必要量は違っていて、最も必要量の多いのが窒素(N)ですが、微量要素8種 の中では鉄分は植物にとって他の微量要素よりも必要量が多いのではないかと思うのです。

それでは、土壌中に鉄が少ないのか?といえばそうではなく、河原に転がっている石の中など地球上のいたるところにふんだんに存在します。 土壌中では、酸素、ケイ素、アルミニウムに続き4番目に多い元素です。 その鉄分が根から吸収されるにはイオンの形態で水に溶けている必要があるのです。ところが土壌中の※鉄イオンは酸素と結びつやすく酸化鉄(赤さび)となり根から吸収されない形態になります。 それに加えて、鉄イオンの状態で水中で存在する鉄分は極わずかのようなのです。植物はこのわずかの鉄イオンを根から吸収するために、根の先から有機酸などを分泌して根から吸収できる形態に変えて利用しているのです。イネ科植物は根からムギネ酸を分泌して鉄を吸収することで知られています。

※鉄イオン 鉄イオンは二価鉄(fe2+)と三価鉄(fe3+)があるのですが、多くは根から吸収することができない三価鉄です。 そのため、植物は根から有機酸などの物質を分泌して三価鉄を二価鉄に変換(還元)して取り込んでいるのです。

鉄は土壌中に多量に存在するけれど、植物の根が吸収できる鉄はほんのわずかで、その取り込みに苦労?しているのです。 それで、根がすぐに利用できる二価鉄を 溶け込ませた資材がメネデールのようです。 特に、乾燥や過湿、寒さ、移植時など植物の体力が弱っているときは根から有機酸などの物質を出す力も弱まるので、鉄の吸収ができなくなってしまいます。メネデールの用途は、
①樹木の移植時の土壌潅注
②弱った樹木に樹幹注入
③挿し芽、挿し木苗の水揚げ時に
④種まきの植床に
①~③は植物の体力が弱まっている状態のときなので、メネデールは効果を発揮するのです。

メネデールの効果について少々疑問を持ってこの投稿を書き始めたのですが、調べつつ書き綴っていくうちに、メネデールというより鉄の効果について、鉄が動物(人間)も植物も両者の生命維持にとって重要な働きをしていることを再確認した次第です。

<追記>
メネデールの水溶液に溶けている二価鉄(fe2+)は土壌に潅水されると酸化されて根から吸収されなくなります。ので、メネデールを1回やるだけでは効果は薄いのです。使い方については、下記ページを参考にしてください。

メネデールの使い方
⇒ https://www.menedael.co.jp/products/menedael/gardening/

 

 

 

 

 

山野草開花調査記録 

下記の調査表は、札幌市農業センターの事務所裏のロックガーデンに植栽されていた山野草の開花時期を調査したものです。 当センターは、現在は小金湯さくらの森公園となっていますが、平成7年までは札幌市内の農家の方に野菜や花卉などの農業技術の指導・支援を行う施設でした。 そのセンター内の一画に、具体的には、新しく整備された小金湯さくらの森公園の中央園路階段を上がりきると簡易な鐘楼とその横に休憩できるパーゴラがあるのですが、それよりももう少し山側に、このロックガーデンがありました。
この開花調査を担当したのは、その当時当センターに勤務していた本田職員で、彼自らが石等を配置し、道内の業者等から山野草を集めてロックガーデンを作り上げました。 しかし、小金湯さくらの森公園が整備されたことにより残念ながら現在はなくなっています。
この開花調査をした本田氏はすでに亡くなられており、彼が残した遺稿は小西氏に引き継がれました。 本田氏と小西氏は農業センター設立当初近くから長らく職場を共にした仲で、私も、両氏と5年間職場の席を同じにしました。 その後、30年余の年月を経て、小西氏とは豊平公園の緑の相談員で一緒になりました。そんな関係で、当ブログに掲載させてもらうことが出来るようになったのです。
調査表には、世界各地の山野草が1091種掲載されています。 興味のある方は参考にしてください。
この調査表の末尾に、小西氏が追記しています。
 この資料は、札幌市経済局農務部農業センター(南区小金湯)において、昭和53年から平成2年までの10年間、農業センターロックガーデンを中心に植栽された山野草について、担当職員(本田光幸)が緻密な調査を纏めたものである。当資料については、平成2年9月、京都大学名誉教授(園芸学)塚本洋太郎博士が京大の園芸学生3名を従え来場され、同園に展示の山野草について3日間に亘る展示植物の検証と監修、評価の確証を得たものである。尚、この山野草収集については、小樽市赤岩園芸(園主 続木忠治氏)の多大な協力を得ていることを付記する。 編集責任 小西敏昭   

⇒ 山野草開花調査 
⇒ 山野草開花調査 アイウエオ順
※ 和名・学名は、園芸植物大辞典を基本に記載

追記;同調査表のエクセル版をご所望される方は、コメント欄にメールアドレスを記入してください。折り返し送ります。

 

    

 

 

2021年の夏

上の表は、札幌の2021年7月1日~8月19日までの気温とその間に降った雨(降水量)を示したものです。 青線は日ごとの平均気温、赤線は過去30年間の日ごとの平均気温、 黒線は降雨量です。
図の下部にある1~49の数字は日日で、数字の1は7月1日、31は7月31日を、31の次の数字33は8月2日を表し、数字49は8月19日と読み替えてください。 図左側の数字0~60は、温度(℃)と降水量(mm)の単位です。

以下の文章は、あるwebページの今年の8月7日に書かれた北海道の猛暑に関する記事です。
道内での連続猛暑日は今日で15日連続となっており、今年更新中の最長記録をさらに更新しています。昨年までの最長記録は2018年などの4日連続で、今年はそれを大きく上回る記録となっています。
また、札幌でも午後3時までの最高気温が31・9度と真夏日となりました。連続真夏日記録は今日で18日連続となり、日毎の気温の記録が残っている1879年からの統計史上、最長の記録を更新しました。これまでの最長記録は1924年7月28日から8月13日にかけての17日連続で、97年ぶりの記録更新となりました。

上図の気温のグラフ線は平均気温です。最高気温は平均気温に約5℃を足したものなので、今夏は図の30℃線を超える日が続いたことになります。
確かに今夏は暑かったです。 特に夜温が下がらす寝苦しい夜が続いたのが印象に残っています。 札幌に来て40年以上になりますが、こんなに暑い夏は初めてのことことです。 今夏は何十年ぶり、いや、100年に一度の暑さだったのです。
そしてもう一つ、今夏の特徴は雨が少なかったことです。 上図は7月からの気温と降水量ですが、今夏は7月と同じように6月下旬からも雨が少なかったのです。 気象台によると、札幌の6・7月の降雨量は、

2021年       過去30年間の平均
6月  50.5mm      60.4mm
7月   7.5mm      90.7mm

この表を見ると、2021年6月の降雨量は過去30年の平均値と大した差はないように見えますが、6月20日に14.5mmの降雨があってからほとんど雨は降っておらず、それが8月上旬まで続いたのです。
2021.7.26
豊平川に架かる橋、ミュンヘン大橋と藻南橋の中間辺りから上流側(南区方面)を撮ったものです。 赤茶けているのは芝生。
2021.7.26
上の写真と同じ場所から反対の下流側(街の中心部に向かって)撮ったもの。 白っぽいベージュ色の部分が干しあがっている芝生地。 堤防斜面の緑色の部分はムラサキウマゴヤシ(アルファルファ)とイタドリ。 ムラサキウマゴヤシの根は地下10mくらいまで達するといわれています。 堤防の表土流失を防ぐにはもってこいの植物材料のようです。

今年2021の夏は、高温と少雨の夏だったのです。 北海道の小麦は収穫時に好天が続いて豊作だったようですが、タマネギとジャガイモはコロッコロの小さい玉しか収穫できていないようです。
一方、我家の家庭菜園は好天に恵まれて大豊作でした。 高温と少雨だったことが、病気の発生を抑制したのです、キュウリは5株植えて200本を超える収穫ができました。 例年は6月初旬にキュウリの苗を定植して1ヵ月も経たないうちに葉に褐色の斑点が出始め(べと病)、7月下旬になると褐斑病と思われる症状が下葉に拡がり、8月上旬には下葉がなくなること(葉に病気が拡がり、それを防ぐために除去)が多かったのです。 しかし、今夏はお盆を過ぎてもその症状の出方が少なかったのです。 6月下旬から8月上旬までほとんど雨が降らなかったことが病気の発生・拡大を防いでくれたのです。 トマトも例年になく甘味のあるものが収穫できました。 その要因は雨が少なく日照が十分あったことと思っています。
その代わり、8月に入ってからは畑の潅水に追われました。 潅水といっても、ホースの蛇口からシャワーのようして水をかけるのでは十分に地面に染み込まないので、作物と作物が植えてある間の通路に水を満たすのですが、ほぼ毎日1時間ほど潅水をしていました。 10月に払う水道代が少々心配です。

それでも、今夏の我家の家庭菜園は、畑作農家さんには申し訳ないのですが、美味しいものが収穫できて満足のいくものでした。
暑い暑い夏も悪くはありません。 しかし、夜温がもう少し下がって、20〜21℃になってくれれば最高なんですが。

 

エゾユズリハ  冬芽

2017.5.4
写真は北大植物園の北方民族植物標本園にあるエゾユズリハ。
冬芽は膨らみ始めていて、写真中央の細長い紡錘形をしたのが葉芽、その基部に4個の丸い玉が花芽。
撮ったのが5月4日。 この日は「みどりの日」で入園無料。 北大植物園の開園日が4月29日。 なので、冬芽を撮ろうとしても時期的に無理なのです。 冬芽は以下のサイトを参照してください。

⇒ 気ままに自然観察

2014.5.11
葉芽の展葉と冬芽(花芽)が開いてたくさんの蕾が見える。

2014.6.8
それから約1か月。 蕾は開花。 エゾユズリハは雌雄異株で、写真は雄花(雄花序)のようで、個々の花は雄しべだけで花弁も萼もない。(樹に咲く花)

2015.10.4
10月に果実の表面が粉を吹いいたような、黒みがかった淡青紫色の実をつける。


2012.6.8                                        2012.7.22
ユズリハは名前のとおり、春になって若葉がのびると、古い葉は「若葉に譲る」ように散ることからその名がつけられたようですが、実際には、写真左のように新葉が開くと同時に2年生葉が枯れ落ちるのと、写真右のように新葉が成長しても2年生葉が元気なものもあり、それぞれの株で葉の譲り方は異なるようです。

⇒ エゾユズリハ:譲らない葉

南中について

朝目覚めて窓のカーテンを開けても薄暗く、日中も曇りの日が続くと太陽の光と暖かさが恋しくなります。なぜか?そういう時期に国立天文台暦計算室の「札幌の日の出日の入り(こよみ)」を見ることが多くなります。 いつもは日の出日の入りだけを見ていて、南中時刻という欄があることに気づいてはいても意識はなかったのでしょう、しかし、今回はたまたまその欄を見て不思議に思ったことがあります。

南中とは、その日の太陽の位置が真南で真上(一番高い位置)に来る状態のことです。 時刻で言うと本来は12時に当たるのですが、札幌の場合、兵庫県明石市(日本の標準時刻)を通る東経135度と札幌の東経141度とに約5度の差があるため(地球は反時計回り)、札幌の南中は日本の正午より早く来ることになります。
我家の窓は真南に面しており、午前11時半頃、太陽光線が真っ直ぐに入り込むので、私は札幌の南中(12時)は日本の南中より30分ほど早く来て、時刻は年中変わらないと思っていたのです。 それなので、日本の標準時刻の明石は1年じゅう南中は12時と思っていたのです。 ところが、札幌の南中時刻の欄を見ると日々変わっていて、年間を通して見ても南中の時刻が月によって早晩があるのです。 神戸市もやはり札幌と同様に南中の時刻が日々変わっていて、最大で30分の早晩があるのです。

〇 札幌市と神戸市の南中時刻
国立天文台の「日の出日の入り」は、各都道府県の県庁所在地のみの掲載になっているので、明石市に最も近い神戸市を採用。
`       札幌(140°21′16″) 神戸(135°11′44″) 明石(135°)
1月1日   11:38     12:03
2月1日   11:48     12:13
3月1日   11:47     12:12
4月1日   11:38     12:03
5月1日   11:32     11:56
6月1日   11.32     12:03
7月1日   11.39     12:03
8月1日   11:41     12:06
9月1日   11:35     11:59
10月1日  11:24     11:48
11月1日  11:18     11:43
12月1日  11:24     11:48

数字ではわかりにくいので図にすると、

➀ 青線:札幌市、赤線:神戸市
⓶ 左の数値は時刻 11が11時で、12が12時。小数点に6をかけると分になる。
例:11.8=11時8×6分=11時48分

図で見るとわかりやすく、月毎に南中時刻が波打つように変わっています。 2月が最も南中時刻が遅くなり、11月が最も早くなります。 「秋の日は釣瓶落とし」の慣用句?諺?がありますが、これは秋は日の暮れるのが早いことの例えで、秋分の日を挟んで8月のお盆頃から11月中旬まで毎日約1分強日の入りの時刻が早くなっているのですが、それに輪をかけて、この時期(10月下旬~11月上旬)に南中時刻が最も早くなることで秋の日暮れをより一層早く感じるのでしょうか。 反対に、2月は毎日1分強づつ日が長くなり、南中時刻が1年で最も遅くなるので、日が長くなるのを感じるのでしょうね。

それにしても、なぜ南中時刻が変化するのでしょうか? ネットで検索すると詳しく説明しているページがいくつもあるのですが、太陽と地球の位置関係や地球が自転しながら太陽の回りを回っていること、地球の自転軸が23.4°傾いていることを頭に描いてそれらを読むのですが、なかなか、どうしても南中時刻が変化するイメージが浮かび上がってこないのです。 というより、理解しようとすることが面倒臭くなってあきらめたのが本音です。 自分の理解力やイメージする力のなさを感じてしまいます。 とりあえず、国立天文台のページを載せておきます。

 南中時刻は変化する