マンデビラ 鉢花

2023.8.31
写真のマンデビラは百合が原公園の温室に展示されていました。 毎年、この時期(8月~9月上旬)に展示されるようです。  豊平公園の緑のセンターでは6月頃に鉢花で販売されています。 今から30年以上前にはピンクの大きな花を咲かせるデプラデニアという名前で出回っていたのを覚えています。
マンデビラは南北アメリカ大陸のメキシコ~アルゼンチンに分布する熱帯性の植物です。関東以西では春から秋にかけて長期間咲いているようですが、札幌では真夏の8月~9上旬?が見頃のようです。
2023.8.31
マンデビラはつる性の植物で、そのつるに対生の葉をつけ、その葉の基部から10cm程?の花梗を伸ばし、その先に4~5輪の花を咲かせます。古株になると茎は木質
化します。
園芸店で販売されているマンデビラの鉢花は、アサガオのように行燈づくりで、鉢の
周囲に支柱を数本立てて、それにつるをぐるぐると巻き上げる仕立て方のものです。
2022.8.15
花の大きさは10~15cmと大きく、花弁は漏斗状で先が5つに分かれています。花色は真っ赤~ピンク~白色まで幅広く、最近は品種改良が進んで多くの花色のものがが出回っているようです。

マンデビラは関東以西では春から秋にかけて長期間開花しますが、札幌の見ごろは真夏の8月と比較的期間は短いようです。
百合が原公園の8月に花を咲かせる栽培方法は、

①9月中旬に花が終わった後、養生するハウスに移動
②秋から来春までの冬期間は、マンデビラが寒さの害を受けない程度の低い温度の場所(最低温度が5℃?)で越冬させ、そのときに夏に伸びたつるを切り戻す。
③なので、翌春の芽出しは4月以降になり、つるが伸長しだすのは5月で、
④おそらく、葉柄基部に花芽ができるのは。6月以降になる。
⑤それが蕾となり開花につながるのですが、それまでにはある程度の日数が必要で、
⑥札幌の場合、花が開くのは8月になる。

と推測?憶測しています。

もし、札幌で5~6月に花を咲かせようと冬場に温度を上げて育てても、雪国の低くて弱い太陽光tと少ない日照時間では十分な成長が見込めないのかもしれません。 それとも、たとえそれができたとしても、冬場において温室に保管すべき他に優先すべき鉢花があって、それと併せて、マンデビラに5~8月の長い期間咲いてもらわなくても夏場の1ヵ月で十分と思って、現在の冬期間低温のハウスに保管して8月に開花させる栽培方法になったのでしょうか。 確かに、札幌では5~6月にかけては他にきれいな花はいくらでもあるので、 冬場にわざわざ温度を上げてマンデビラを育てる必要はないのです。

 

アザレア 豊平公園緑のセンター

地下鉄豊平公園駅の1番出口の階段を登りきると目に入るものは雪に覆われた建物と道路。辺りは白一色。この時期の札幌ではありきたりの冬景色です。1分程歩くと豊平公園緑のセンター入口です。緑のセンター展示温室に入ると、今までの真っ白な世界から突然ピンクの塊が目に飛び込んできます。そのボリュームに一瞬はっとするというか、思いもよらない暖かい色合い?明るさ?に出会うのです。
2023.1.31
写真左側の紫紅色の花はヒラドツツジの仲間で、手前は紫宸殿 奥がオオムラサキツツジ。オオムラサキツツジは屋外でも越冬して、札幌中心部のビルディングの外構植栽で見かけます。右側奥の一団はアザレア。 アザレア品種 “浜の粧” など多数展示。

1月31日~2月12日まで当緑のセンターでアザレアが展示されています。
展示されているアザレアの鉢数は約130個で、大きいものは10号鉢(鉢の天端の直径が30cm、1号=3cm)で株高は1m~1.5m、小さいものは5号鉢。 2023.1.31
このアザレアの見頃は展示期間の2週間ほどなのですが、その後、このアザレアは来年の今頃まで残りの49週間をどのように管理されているのでしょうか?
アザレは札幌では屋外で越冬出来ないのでビニール温室に移されます。同温室の設定温度は最低気温が5℃を下回らいない程度のようです。大きい株の剪定は温室に移動後に行われ、1ヵ月もすると新しい芽が出てきてます。それが春から夏にかけて10~20cm?ほど成長し、その枝先に花芽をつくります。
毎年3月中旬~5月上旬にかけて鉢替え若しくは鉢増し(鉢を一回り大きいものに植え替える)をします。10号鉢のように大きいものは2年に1回、小さいものは毎年植え替えます。
5月に入り暖かくなってきてから温室から屋外に搬出して管理します。春から夏の成長する期間は十分な水やりと肥培管理を行います。 11月に入ると再び温室に搬入
します。
札幌の一般家庭でアザレアを毎年花を咲かせるには、花が終わった後春までアザレアが寒さで凍らない程度の部屋で管理できるかどうかが重要になります。 それをそのまま暖房も効いた暖かい部屋に置いておくと、軟弱な新梢が細長く伸びてきます。その枝に花芽ができる可能性はありますが、樹形は乱れて、購入時のようなコンパクトな樹姿は望めません。
2023.1.31
アザレアは19世紀初頭に、ベルギーを中心としたヨーロッパで、室内観賞用の鉢物として改良された常緑性ツツジの総称です。交配親となったヤマツツジの仲間は、中国、台湾、日本、ベトナムやフィリピンなどに約95種が分布しています。日本国内には、サツキRhododendron indicum)やヤマツツジ(R. kaempferi)、モチツツジ(R.macrosepalum)など観賞価値の高い15種ほどが自生しており、江戸時代から品種改良が盛んに行われ、サツキ、クルメツツジ、江戸キリシマなど、数多くの園芸品種群が作出されました。これらのうち、ケラマツツジ(R.scabrum)、サツキ、大紫、白琉球などと、中国から導入されたタイワンヤマツツジ(R.simsii)が、江戸末期から明治時代にイギリスに渡って、オランダを中心に大規模な交配がなされ、現在のアザレアが誕生しました。(NHKみんなの趣味の園芸)

 

 

カネノナルキ(金のなる木) 開花


webページ  BIOTONIQUE から写真をお借りしました。
https://biotonique.jp/article/36844

写真は「カネノナルキ」、「花月」などと呼ばれてよく見かける鉢花です。 葉は艶とふっくらとした厚みがあって丸みを帯びているのが特徴です。 大きいものは、40cm以上ある大きな鉢に高さ幅共に1m以上にもなる鉢物をときおり見かけます。 しかし、花が咲いている株を見かけたことがなかったのですが、豊平公園の緑のセンターでそれに出会いました。
2018.12.9
それはちょうどこの時期で、花は年末~年始にかけて咲くようです。
写真の黒い鉢の大きさは直径30cm程の10号鉢で、株の大きさは高さ幅共に1mを優に越す立派なものです。 小さな白い花が株全体を被うように咲いています。
今冬の緑のセンターのカネノナルキは展示温室2階の片隅に置かれていました。これ以上鉢を大きくしたくなかったのか?強めの剪定をされていて、残念ながら、今冬は花は咲いていませんでした。
それで、この展示温室を管理する方に、この花の咲かせ方を尋ねると、
「年間を通じて灌水を控える、冬季間はほとんどしない」
と教えてくれました。
2018.12.9
花は直径1.5cm前後の5花弁で、花の咲き方は花軸が分かれて多数の花をつける集散花序です。

「金のなる木」または「花月」とも呼ばれるこの鉢花は、ベンケイソウ科クラッスラ属で、南アフリカケープ州南部~ナタール州原産。高さ1~3mの低木。
クラッスラ属の植物は、南アフリカ、ナミビア
(砂漠で有名)、マダガスカルに分布し、300種以上が知られ、、草本または低木状の多肉植物。(園芸植物大事典)
ホーマックやビバホームなどの園芸店で下の写真のように販売されている多肉植物はクラッスラ属も多いのではないでしょうか。 2022.12.23

緑のセンターのカネノナルキは毎年12月に花が咲くのですが、そのために、「年間を通じて灌水を控える、冬季間はほとんどしない」ということを職員同士で申し合わせているようです。
それでは、カネノナルキの原産地、南アフリカの気候はどのようなものなのでしょう。
赤:気温、黒;降水量

  ケープタウン プレトリア 札幌 東京
1月 21.0 10.1 23.0 111.3 ー0.9 113.6 5.2 52.3
2月 21.1 15.0 22.9 104.5 ー3.1 94.0 5.7 56.1
3月 19.8 13.5 21.6 86.4 0.6 79.9 8.7 117.5
4月 17.3 47.4 18.8 29.1 7.1 56.8 13.9 124.5
5月 15.0 80.7 15.3 17.5 12.4 53.1 18.2 137.8
6月 12.8 93.4 12.3 7.5 16.7 46.8 21.4 167.7
7月 12.2 91.5 12.2 2.7 20.5 81.0 25.0 153.5
8月 12.7 78.2 15.4 4.4 22.3 123.8 26.4 168.2
9月 14.4 44.5 19.3 16.6 18.1 125.2 22.8 209.9
10月 16.3 35.3 20.8 72.2 11.8 108.7 17.5 197.8
11月 18.3 23.1 21.8 100.2 4.9 104.1 12.1 92.5
12月 20.1 13.0 22.4 113.8 ー0.9 111.7 7.6 51.0
  16.8 545.8 18.8 666.2 8.9 1098.7 15.4 1528.8

ケープタウンは海洋に面していますが、プレトリアは内陸に位置するので、かなり気候が違うようです。 気温は両都市共に最高気温が1月の21~23℃、最低気温が7月の12.2℃で、羨ましいことに、1年中日本(関東以西)の春と秋のようです。
しかし、降雨量は札幌の約半分で、ケープタウンは夏季は少なく、冬季にある程度(80~90mm/月)降るようです。 典型的な地中海性気候(夏暑く若しく暖かく乾燥するので、植物の生育は秋~翌年の春までが中心)です。
一方、内陸部のプレトリアは夏に雨が多く、冬はほとんど降らないようです。この両市は気温はよく似ていても、雨の降り方は全く逆です。ケッペンの気候区分では、亜熱帯性の温暖冬季少雨気候)と言うそうです。
ネットなどで調べるとカネノナルキの生育地は、地中海性気候のケープタウンではなく、南アフリカの内陸部(夏季に雨が多く、冬季はほとんど降らない)で、生育パターンは冬型ではなく夏型のようです。 しかし、南アフリカの気候は年中日本の春と秋なので、日本の夏場の高温(特に関東以西)は嫌うようです。
そういう意味で、緑のセンターの潅水方法(夏は少なめ、冬は極力控える)は現地の気候に合ったやり方なので、毎年花を咲かせることができるのでしょう。

「NHKみんなの趣味の園芸」によると、カネノナルキには、小さな株によく花をつける花の咲きやすい系統と、大株にならないと咲きにくい系統があるようなので、普段見かける大株でも花の咲かないものはその系統かもしれません。 2022.12.23
写真は、緑のセンターの売店で販売されている鉢花(カネノナルキ)です。 鉢の大きさは5号鉢(直径15cm)で葉張りは40cmくらいでしょうか。 この時期に、他の園芸店で12cmポリポットに花を咲かせたカネノナルキを見かけます。おそらく、これらが小株でも花を咲かせる系統なのでしょう。

シクラメン コウム(原種) 春咲き種 

昨年の9月22日に百合が原公園のロックガーデンの片隅に咲いているシクラメン(原種)を取り上げました。 シクラメンの秋咲き種(シクラメン ヘデリフォリウム;Cyclamen.hederifolium)です。
⇒ シクラメン  20年 

2021.4.29
写真はシクラメン コウム(Cyclamen.coum) 草丈は10cm未満で、地面を被うように葉を拡げています。
秋咲き種の シクラメン ヘデリフォリウムと春咲き種の シクラメン コウムは混在して植えられているようで、一面に生えている葉すべてが、シクラメン コウムとは限らないようです。
というのも、昨秋見たときは、地面を被う葉数が少なく、一枚一枚の葉も小さかったので、その後の9月末〜10月までの寒さがくるまでに葉を成長させるのでしょう。
秋咲き種(シクラメン  ヘデリフォリウム)は葉の成長と共に花を咲かせ、春咲き種(シクラメン コーム)は葉が成長した後に花を付けるようです。
2021.4.29
昨秋見たシクラメン ヘデリフォリウムは、花弁がキツネの耳のようにピンと立った細長い花でしたが、シクラメン コウムの花弁は円形に近く、花の形状も丸みを帯びています。

シクラメンの自生地は地中海の周辺(南ヨーロッパ、地中海に近い西アジア、北アフリカ)で、この地域の気候は、夏はほとんど雨が降らず、冬から春にかけてほんの少し降る程度(日本に比べて)で、夏場の気温は27~28℃、冬場は10℃前後です。
以下は地中海沿岸の3都市の気温と降水量を示したものです。

地中海地域にある都市の月別平均気温と降水量(理科年表)
・1981~2010年の平均、赤;気温青:降水量

アテネ ダマスカス
(シリア)
チュニス
(チュニジア)
札幌 東京
1月 12.0 76.0 6.0 27.7 11.8 58.2 ー0.9 113.6 5.2 52.3
2月 12.0 48.0 7.8 33.0 12.2 50.2 ー3.1 94.0 5.7 56.1
3月 14.2 29.3 11.2 20.1 19.0 41.3 0.6 79.9 8.7 117.5
4月 17.5 16.3 16.1 12.1 16.6 36.7 7.1 56.8 13.9 124.5
5月 21.6 10.5 20.9 8.4 20.4 25.7 12.4 53.1 18.2 137.8
6月 25.5 7.3 25.0 0.9 24.5 12.5 16.7 46.8 21.4 167.7
7月 27.8 0.6 27.0 0.0 27.6 5.1 20.5 81.0 25.0 153.5
8月 28.1 0.3 26.9 0.0 28.2 8.0 22.3 123.8 26.4 168.2
9月 25.8 6.5 23.9 0.4 25.2 46.2 18.1 125.2 22.8 209.9
10月 22.6 13.8 18.7 11.1 21.6 50.9 11.8 108.7 17.5 197.8
11月 17.7 43.1 11.8 30.6 16.7 57.6 4.9 104.1 12.1 92.5
12月 13.7 80.7 7.5 31.7 13.1 74.5 ー0.9 111.7 7.6 51.0
19.9 337.4 20.7 176.0 17.2 466.9 8.9 1098.7 15.4 1528.8

この表を見ると、3都市とも真夏7~8月の2ヵ月間の月別総雨量が10mm未満で、シリアのダマスカスに至ってはまったく雨の降らない降水がゼロです。 地中海周辺地域の夏はカラッカラなのです。 そして、夏が終わり9月に入ると少しばかりの雨(日本比べて)が降り、これが翌春まで続きます。 この時期に葉を出し花を咲かせ、イモ(塊茎)を太らせるのです。 日本の一般的な植物とは全く逆のパターンで生活しているのです。

上文を書いていてふと思ったのですが、
シクラメンは、本来 の自生地とは天と地ほどの違いのある、植物が半年近くを雪の下で札幌という北国の環境で、とりあえず、冬を越すことができるという事実です。 このことは、シクラメンという植物は、寒暖、降水量の多少など環境の振幅(ふれはば)に対して相当の適応力があり、世界中のほとんどの地域で生育することができる植物のように思えるのです。
しかし、草丈が低く地面にへばりつくように生えているシクラメンの形状では、雨の多い地域に生える草丈の高い植物に負けてしまうので、もともと雨の少ない乾燥した地域にしか生存できなかったのでしょう。

札幌で春に咲く球根類(チューリップ、ムスカリ、ヒヤシンス、スイセンなど)の自生地は多くが雨の少ない地中海周辺地域や西アジアです。
それらの地域に生育する球根類は、札幌では秋に植え付け、樹木がまだ葉を広げる前に花を咲かせ、夏を迎える頃には葉は黄色くなって枯れて休眠します。 シクラメンもこれらの球根類と同じ性質、同じ生活様式の植物のようです。

シクラメンというと、晩秋から冬にかけてきれいに咲くシクラメンの鉢花を思い浮かべます。 また、原種シクラメンというと、あまり見かけない珍しさや希少性がある植物というイメージがあります。
しかし、チューリップやスイセンなど普段街中でよく見かける球根類と同じ地域に生育し、同じ生活様式であることが分かると、それらの球根類に申し訳ないのですが、なんだかシクラメンの希少性が失われた感じがして少々がっかりした気分です。