プラタナス 炭そ病(その3)

平成16年(2004年)9月に札幌(北海道)を台風18号が襲いました。 最大瞬間風速50mを超える強風が市内の街路樹や公園樹をズタズタに切り裂きました。 それから2年後の平成18年(2006年)に札幌を含めた道央地区でプラタナス炭疽病が大発生しました。
プラタナス炭疽病(その1)
→ http://kimagurenikki.sunnyday.jp/puratanasu-tannsobyou/
プラタナス炭疽病(その2)
→ http://kimagurenikki.sunnyday.jp/puratanasu-tannsobyou2/

プラタナス 2016.8.18  国道453号(旧支笏湖線)南区真駒内曙  街路樹プラタナス
それ以前は、国道453号の植樹桝に空いているところはありませんでした。
それから10年、写真のように空桝が目立つようになっています。
プラタナス 2016.8.18  国道453号(旧支笏湖線)南区真駒内曙  街路樹プラタナス
写真の街路樹プラタナスは、主幹が高さ4.0~5.0mの位置で切断されています。
その主幹から胴吹が出ていますが、枝先には葉がありません。
夏場に、この歩道を歩くと、ところどころプラタナスの葉が落ちているところがあります。 その葉を見ると、葉脈に沿って褐色に枯れている部分があります。 炭疽病に罹った葉です。
胴吹の枝先が枯れているのは、炭疽病に罹って、新芽が展葉直後に枯れ上がったか、若葉が落葉した部分です。
樹に体力がある内は再度新芽を出す元気もあるのでしょうが、毎年毎年、炭疽病に罹って落葉すると、その元気もなくなり、最後に枯れ上るようです。
写真の街路樹主幹上部が切断されたのは、毎年炭疽病に罹って胴吹もでなくなり、完全に枯れ上ったので切断されたようです。

プラタナス 2016.8.18  国道453号(旧支笏湖線) 南区真駒内公園沿い街路樹プラタナス

写真左の街路樹プラタナスは、辛うじて地際からひこばえは出てきていますが、主幹は完全に枯れ上っているようです。 おそらく、今秋か来春までには伐採されているのでしょう。
写真右の街路樹プラタナスも炭疽病に耐性のない樹のようです。 主枝が切断されて主幹からでているのは、多くは胴吹の葉のようです。

国道453号には、写真のように毎年炭疽病に罹って樹勢を衰退させる樹もある一方、、枝葉が繁茂して元気な街路樹も多くあります。
札幌市の公園や街路樹に植えられているプラタナスは、ほとんどがモミジバスズカケノキ(スズカケノキとアメリカスズカケノキの交配種)といわれていますが、国道453号の街路樹プラタナスを見ると、炭疽病に対する耐性は個々の樹によって相当ばらつきがあるようで、今後も炭疽病に対して耐性のない樹は枯れて伐採されるのでしょう。

スズカケノキ:見かけないプラタナス

札幌市の公園や街路樹でプラタナスをよく見かけます。大通公園には樹高が25m前後で幹径が1mくらいありそうな大きなプラタナスが何本もあります。北海道庁周辺には樹高が15m前後ある立派なプラタナス(街路樹)が立ち並んでいます。
011 プラタナス 真駒内南町公園2011.8.25
昭和40年前後に植えられたプラタナス 樹高約20m弱、幹径80cm、南区真駒内南町公園
これらのプラタナスは“モミジバスズカケノキ”と呼ばれる種類です。札幌市内のプラタナスは、ほとんどこの種類のようです。日本の公園などにあるプラタナスは“スズカケノキ”、“アメリカスズカケンキ”“モミジバスズカケノキの3種類ですが、北海道樹木図鑑に載っているプラタナスは、“モミジバスズカケノキ”のみで、“スズカケノキ”と“アメリカスズカケノキ”は未記載です。おそらく、北海道では、この2種はほとんど?なかなか“出会うことがない樹”だからなのでしょうね。
この“モミジバスズカケノキ”は、“スズカケノキ”と“アメリカスズカケノキ”の交配種で、イギリスでつくられたといわれ、日本に明治末期に移入されています。札幌の街路樹では、昭和12年(1936年)に西5丁目線(北海道庁東側の道路)が最も古いものとされています。
しかし、見つけました。中島公園で“スズカケノキ”を見つけました。
025 スズカケノキ2013.7.7
樹高は約10m、幹径は70~80cmです。 一見して、普段見かけるプラタナス“モミジバスズカケノキ”と違うのがわかります。それは、葉の大きさです。
073 スズカケノキ2012.9.2
このスズカケノキの葉の大きさは、モミジバスズカケノキの1/3です。特別に小さい葉を選んで写真を撮ったわけではありません。この樹に付いている標準的な大きさのもを選んでいます。“モミジバスズカケノキ”の葉は縦横ともに20cm以上あるのですが、スズカケノキの葉は、10cm前後でしょうか。葉を触った感触は固めです。
写真のスズカケノキには樹名板がつけられていて、それには昭和54年5月と記されています。ので、樹齢は45~55年くらいでしょうか。
植えられた時期から考えると、普段見かけるプラタナス“モミジバスズカケノキ”に比べ、その大きさは小さめで、枝の伸び方も短いようです。写真では分りづらいですが、数年前に剪定されています。
080 スズカケノキ2012.7.22
スズカケノキの若い果実
<余談:この樹が本当のスズカケノキ?>
樹名板には、学名:Platanus.orientalisと書かれているので“スズカケノキ”なのでしょうが、この樹の果実と葉が樹木図鑑などに記載されている、“スズカケノキ”と少し違うようなのです。図鑑などでは、葉に深く切れ込みが入り、果実は数個つくと記載されているのですが、中島公園のものは、葉の切れ込みが深くなく、果実も1個のものが多いのです。樹形・樹姿や葉の大きさから、“モミジバスズカケノキ”ではないのは明らかなのですが、“スズカケノキ”であるとははっきり言えないようです。

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プラタナス:プラタナスグンバイ

台風18号の影響で日月共に1日中雨。日曜日は定山渓へ日帰り温泉に。月曜日は久しぶりに何処へも出かけず、テレビ三昧。今話題の“半沢直樹”をビデオ鑑賞。見入ってしまいました。来週は最終回。半沢の同期、近藤はねがえるのでしょうか? 最後のシーンで近藤が大和田常務に搾り出すように言った台詞、“お願いします”は本心ではなく、お芝居ではないでしょうか? そう思いたいのです。それにしても来週、最終回が楽しみです。
今日は、最近プラタナスにつくようになった害虫“グンバイムシ”についてです。
最初に気付いたのが昨年の夏、お盆を過ぎた頃でしょうか。プラタナスの葉がやけに白っぽく見えるのです。おかしいなと思いながら、その年は過ぎてしまいました。
010 プラタナス 大通西5丁目(赤字)2013.8.26
この写真は、今年の8月26日に撮っています。西5丁目腺の街路樹プラタナスです。真ん中の街路樹が白っぽく見えます。プラタナスグンバイの付いた街路樹です。郊外の街路樹プラタナス(南区を走っている国道453号など)はそれほど気にならないのですが、大通近辺のプラタナスはやけに白っぽく見えます。
014 プラタナス(赤字)2013.8.26
近づいて見るとこのように見えます。最初、葉が白っぽいのと赤茶けた部分が関係あるのではないかと思ったりもしたのですが、赤い部分はプラタナスグンバイとは関係ないようで、生理障害か何かの病気なのでしょう。それが何であるのか?は解りません。
012 プラタナス(アカジ)2013.8.26
地面に落ちた葉の裏側を撮っています。この写真でははっきり解りませんが、接近して見ると、
022 プラタナス(赤字)2013.8.26
このように見えます。白っぽくて透けたように見えるのがグンバイムシ(4匹)の成虫です。その近くに少し小型でちょっと茶色っぽいもの(4匹)が見えます。それが幼虫なのでしょうか? そして葉裏全体に黒っぽい粒々が見えます。グンバイムシの排泄物のようです。
グンバイムシは、アブラムシやカメムシと同じように植物の液を吸って生活しています。葉裏から吸汁されるので、葉表から見ると葉緑素が抜けて白ろっぽく少し黄色味を帯びて見えます。葉に生気が無くなるというか、今まで見てきたプラタナス(10月まで青々とした葉をつけているプラタナス)でなくなっています。おそらく来年以降も確実にグンバイムシがつきそうです。そして、街の中心部から郊外へと拡がっていきます。公園や街路樹でこのような生気のない色あせた葉色のプラタナスしか見られないと思うと残念です。
<プラタナスグンバイについて>
ウェブサイトで調べると、各都道府県の研究機関等から“プラタナスグンバイ”についての報告書等を数多く見ることができます。簡単にまとめると、
・日本で最初に確認されたのは今から12年前の2001年、愛知県名古屋市。
・北米原産で、近年ヨーロッパ等世界的に拡がっており、分布を拡大している。
・生態は、東京都では年に2~3世代を繰り返し、成虫で樹皮下で越冬する。
<グンバイムシの名前の由来>
今の若い人はテレビで相撲を見ないのでピンとこないかもしれませんが、相撲の行司さんが持つ軍配に似ていることから来ているそうです。

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プラタナス:炭疽病(その2)

札幌は寒い日が続いています。3月下旬~4月上旬の気温の日(おおよそ最高気温が10℃で最低気温が0℃)が続いている感覚です。今日(4月29日)初めてエゾムラサキツツジの花が咲いているのを見ました。例年より相当遅いように感じます。4月を振り返って、天気が良くて暖かい日は1日あったかどうかです。関東以西では例年の春のようですが、札幌(北海道)では、まだ例年の春は来ていません。昨年の晩秋から「変な天気」が続くと思っていましたが、4月末まで続くとは全く予想外です。こちらに住んでいると、気候(気象)そのものが変わってきているという印象を受けます。
プラタナス炭疽病の後半です。「プラタナス炭疽病がなぜ大発生したか」について、4つの要因に分けて推論しています。少々長いですが、読んでいただければありがたいです。
先ず最初に、平成9年当時のプラタナスには、樹木に抵抗する体力(樹勢)があった。もしかして罹病していたかもしれないけれど、その当時は樹木が炭疽病と十分に闘える力、または、新芽が低温によって炭疽病に罹り枯死してもすぐに回復する体力(新芽を出し直す)があった。平成9年当時の街路樹プラタナスは植栽されてから20年前後のものが多く、定期的剪定が行われてから10年程度で、樹木自体にまだ様々なストレスに耐えうる力があった。一方、平成18年のこの病害の主因は当然日平均気温が12~13℃の低温が続いたことですが、それを起こさせる背景(誘因)として、街路樹では夏場の強剪定や除雪作業によってできる傷などの人為的な作用や排気ガスなどが、公園樹では夏場の剪定や踏圧による土壌硬化など、悪影響=環境ストレス、これら長年の人為的・環境的ストレス等がプラタナスの体力を奪い、炭疽病を引き起こさせる大きな要因になったのではないか というものです。
二つ目に、植栽されてから40年という歳月=時間であるとも考えます。ある程度の樹齢を過ぎると樹木自体にも病原菌に入りやすい個所を作ってしまうなど、人間と同じで、病気に罹りやすくなるのではないでしょうか。
三つ目に、プラタナスは外来種で北海道に移入されてから日が浅く、しかも、そのほとんどが昭和40年代半ば以降に植えられたものであるため、樹齢の似かよったプラタナスが多くの割合を占めていたことが被害を拡大させた要因と考えます。樹齢の異なる世代の違うプラタナスが万遍なく植えられていたならば、これほどの大発生にはならなかったように思うのです。
四つ目は、少し話はずれているかもしれないですが、街路樹や公園樹を剪定する技能士さんの話では、しばらく剪定していないニセアカシアを剪定するとほとんど棘がなく、作業がしやすいという話を聞きます。一方、毎年剪定される街路樹ニセアカシアは1cm前後にもなる棘を出します。これは、ニセアカシアが毎年枝を切られるのはたまらん というメッセージで、その対抗策として棘を大きくして自分を守ろうとしているのです。これと同じように、平成9年前後に寒い時期が続いていますが、その当時は、樹木に体力があり、炭疽病に罹らなかった、罹ったかもしれないですが、我々は気づかなかった、その時に、ある種炭疽病に対する対抗手段:免疫システムのようなもの(人間のような抗原抗体反応のような免疫システムがあるかどうか知りませんが・・)が出来て、菌に対する抵抗力が増したのではないか?と考えるのです。別表によると、平成9年から数年後の平成13~17年までの数年間は比較的暖かい年が続いています。そして、平成18年の久しぶりの寒さに襲われた時には、平成9年頃に獲得した菌に対する抵抗力が失せてしまっていた、弱まったのではないでしょうか?剪定をされなくなったニセアカシアの棘が小さく少なくなるように、比較的温暖な年が続くと、プラタナスも炭疽病に対する抵抗力が弱まったのではないでしょうか。 炭疽病を大発生させる要因としては、上述の三つに比べると小さい(影響力が弱い)と思いますが、平成18年に炭疽病が発生する前の数年間の暖かい気候が病気に対する抵抗力を鈍感にさせたのではないかと推測するのです。
以上、上述した4つの炭疽病を発生しやすくさせる条件(要因)が整ったところに、荒川氏が指摘する、前年度の天候不順など炭疽病が発生しやすい条件が上積みされて、平成18年の久しぶりの寒さ、12℃~13℃/日平均の低温が続いたこと(主因)が炭疽病の大発生に繋がったのではないかと考えています。
2-② 今後も平成18年(2006年)のような炭疽病が大発生するのか?
本州では気候が温暖なためプラタナス炭疽病は発生しないそうですが、欧米では普通の病気であると聞いています。平成18年の大発生で、札幌のプラタナスは炭疽病に対して系統的に弱い樹は枯死したり、炭疽病が発生して6年を過ぎても、いまだに新芽が枯損して夏になってやっと主幹から展葉している街路樹を多く見かけます。
1-013 プラタナス(赤字)
芽吹いた葉が炭疽病に罹り枯死しています。
これらの現状から、平成18年のような大発生は起こらず、芽出し時期の寒さの程度によって病気に強弱は出てくるものの、現在生き残っているプラタナスの中で、炭疽病に弱い系統が毎年発病し、その中から枯死する樹も出てくるというパターンを繰り返すのではないか、言い換えれば、欧米のように普通の病気になるのではないか、と思っています。
このレポートは自分の観察に基づく思い込みで書いています。勘違いや間違いがあると思います。遠慮のないご意見をいただければありがたいと思います。

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プラタナス:炭疽病(その1)

 今から7年前の平成18年(2006年)、札幌を含めた道央圏でプラタナス炭疽病(たんそびょう)が発生しました。 炭疽病というと、赤いトマトの表面にできた丸くて黒い病斑を思い浮かべますが、この炭疽病はカビの仲間で、野菜や草花などのあらゆる植物に発生します。植物にとって普通にかかる病気(菌類)のようです。しかし、プラタナス炭疽病は札幌では今まで一度も発生が確認されていない病気でした。札幌には約10,000本弱のプラタナスの街路樹と多くの公園樹があります。その年(平成18年)の7月は、ほとんど葉がないプラタナスの樹が多く見られました。プラタナス炭疽病が大発生したのです。
以下のレポートはある会員誌に寄稿したものをブログ用に編集しなおしたものです。少々長めになっていますので2回に分けて掲載します。関心のある方、読んでいただければありがたいです。
タイトル:プラタナス炭疽(たんそ)病の発生から6年余、その後に思うこと
1. プラタナス炭疽病の発生
平成18年6月下旬。市内のプラタナスがおかしいと区の公園・街路樹を担当者する職員の間で話題になりました。外来種のプラタナスは、元々芽出しが遅く、特に剪定された街路樹の場合、例年5月下旬から6月上旬になってやっと芽を吹きだす樹が多いのですが、平成18年は、6月下旬になっても殆んど葉のないものや、また、葉はあっても非常に少ないものが目立ちました。7月上旬時点での症状は、主葉脈とその周辺が不整形に褐変している葉と葉柄基部が黒褐変して落葉するものが多数見受けられました。
1-093 プラタナス 5丁目線(赤字)
札幌では、街路樹のプラタナスを剪定すると芽出しは5月下旬~6月上旬になります。新緑が樹木を覆うのは6月下旬です。
1-092 プラタナス 炭疽病(文字)
上下の写真は、プラタナス炭疽病が発生した平成18年(2006年)当時のものがなかったため、昨年の平成24年6月に撮った写真を掲載しています。同じ病気ですので症状は当時と全く同じです。
1-091 プラタナス 炭疽病(文字)
葉のほとんどの部分はなんの異常もありませんが、主葉脈の一部が褐変しています。この写真では見えませんが、葉柄基部が黒く褐変して、この状態で、落葉します。
街路樹の出葉状況でみると、中央区、厚別区、清田区などで被害が大きく、西区、手稲区、南区で少ないものの、市内10区で一様に被害が出ていました。公園樹は、調査を行っていないために各区の状況は不明です。中央区の中心部を観察しましたが、個人的見解として、場所による被害よりも、街路樹・公園樹共に、殆んど葉のない樹の隣に通常年より幾分葉の少ないプラタナスもあったりと、個々の樹木による個体差の方が大きいイメージを持っています。
下の3枚の写真は、平成18年(2006年)プラタナス炭疽病が大発生した年に撮っています。公園樹より街路樹のほうが被害が大きかったように思います。
厚別区
グランドホテル
永山記念公園
同じプラタナスでも、個々の樹木によって被害の程度が全く異なります。
1-2.北海道林業試験場の見解
7月上旬に北海道林業試験場に中央区桑園で採取した資料を持ち込んで調べていただきました。試験場の見解は以下のとおりです。
■症状及び特性:葉の一部に不整形の水浸状褐変が生じ、葉脈に沿って滲むように拡大する。褐変が進行した病葉は萎縮、乾枯してしばらく樹上にとどまったのち落葉する。新梢に形成された病斑が枝を一周したときは、そこから先の枝葉が萎凋枯死する。
■原因:プラタナス炭疽病(病原菌:Discula platani)は開葉後2週間の平均気温が12~13℃以下の時に新梢の枯れが激しくなる。平成18年5月下旬~6月中旬の気温は10~15℃の日が多く、病原菌が発生するのに適した日が多かったことが原因と考えられる。
■事例:日本においては大正時代に記録があるのみ。3年前に函館で発生確認。欧米では
普通に見られる病気
■対策:防除効果が低いため農薬散布は行わない。夏期剪定は行わず、定期的観察を継続する。枯枝と落葉は除去することが望ましい → 病葉の除去を兼ねて落葉前に枯枝除去剪定の実施する
以上が試験場の見解ですが、その後の8月以降の経過を見ても、葉量は通常年に比べて数分の1程度と少ないものが多く見受けられました。個々の樹木を見ると、全く葉をつけてないもの、通常年よりも劣るが葉は十分に出葉しているものなど、個体差があることがはっきりしてきました。
1-3.札幌市公園緑化協会 荒川氏のレポート
この件にして、札幌市公園緑化協会の荒川氏が「2006年6月プラタナス新梢枯死について」と題するレポート(2006.7.18)を作成しています。内容は①経緯、②市内各区での被害の広がり状況、③被害の症状、④要因 に分けて考察しています。④の要因では芽出し時期と前年秋期(落葉期)を温度の面から分析・考察しています。まとめとして以下のように述べています。 昨年秋(平成17年)の気候不順により十分な抵抗性を獲得できなかったプラタナスの枝条が、芽だし前の高温で早い出芽を促され、プラタナス炭疽病発生の好条件である本年(平成18年)の出芽後の低温により、同病が発生し、雨を伴う強風によって感染が広がったものと考えられる。
2 その後のプラタナス
以上炭疽病が発生した平成18年の状況です。その後各区では街路樹を中心に罹病した枝の剪定を行い、それらを焼却処分しています。しかし、炭疽病はその翌年以降も発生しています。被害の程度は平成18年に比べるとその大きさは小さいものの、街路樹、公園樹共に毎年発生しています。公園樹では段々と被害は目立たなくなっていますが、街路樹では枯死する株が出てきています。全市的な状況は分かりませんが、南区内では、国道453号線の街路樹の中には、前年度に出た枝が枯れあがって、枝の基部から出葉しているものや、完全に枯死しているものなど、明らかに炭疽病による被害木と認められるものが多数見受けられます。(平成24年夏現在)。
下の写真3枚は炭疽病が発生してから約6年弱過ぎた平成24年夏に撮影しています。プラタナスが枯死している路線がある一方、全くその当時の被害を感じさせない街路樹路線もあります。
1-016 プラタナス 国道453(赤字)
1-035 プラタナス 柏ヶ丘(赤字)
1-082 プラタナス 南23条(文字)
炭疽病が発生してから6年余が過ぎて、
① 平成18年(2006年)になぜ、突然炭疽病が大発生したのか?
② 今後も平成18年(2006年)のような炭疽病が大発生するのか?
の2点について、炭疽病の発生に一番大きな要因と思われる“温度=低温”を中心に、①についてはその背景(要因):札幌市の街路樹や公園樹の管理が炭疽病にどのような影響を及ぼしたのか という観点から、②については現在のプラタナスの状況から今後の大発生の可能性について考えてみたいと思います。
2-① なぜ、平成18年に炭疽病が大発生したのか?
別表1は平成3~24年(1991~2012年)の22年間の5月20日~6月10日の出葉期の日平均気温(札幌管区気象台)を一覧にしたもので淡い塗りつぶしは、日平均気温が13度以下になった日です。下段の各旬別の平均気温では、黄色の塗りつぶしは13℃以下、淡い塗りつぶしが14℃以下です。道の林業試験場が指摘する「開葉後2週間の平均気温が12~13℃以下の時に新梢の枯れが激しくなる」を基準にしてこの表を見ると、平成18年(2006年)の開葉期の温度が特別に低い年ではなく、全ての年度で日平均気温が13℃以下の日が見られることです。特に、平成9年は平成18年より1℃も低くなっています。
1-002(赤字)
この表から22年間全体を通して、プラタナスの展葉が一番確率の高いと思われる5月26日から6月5日を見ても、日平均気温が13℃以下の日が2日以上連続した日のある年は22年間で12回もあり、2年に1度以上の確立です。これらのことから、札幌の平成18年5月下旬~6月上旬の気象(気温)は例年に比較して特に異常ではなかったように思えます。それではなぜ平成18年に、7月になっても葉っぱのないプラタナスが出現したのでしょうか?なぜプラタナス炭疽病が大発生したのでしょうか?
プラタナスは外来種で明治の末期に日本に移入されています。札幌の街路樹では昭和12年(1936年)に西5丁目線に植えられたのが最も古いものとされていますが、現在公園や街路樹で見るプラタナスの殆んどは昭和40年代以降、それも札幌冬季オリンピック(昭和47年)前後から植えられたものが多く、樹齢は50~55年程度と考えられ、人間でいえば青年期から壮年期で、樹勢の旺盛な時期と思います。
しかし、街路樹は植栽後10年を過ぎると建築限界や建物・電線等に制限されて樹形(樹高や葉張り)もほぼ決まり、毎年剪定されるようになります。現在では年1回の剪定が主流ですが、以前は年2回剪定が行われていました。札幌では短い夏の間に栄養分を取得しなければならない7~8月に、台風対策を主眼として街路樹は毎年剪定され、冬期は道路の除排雪作業時に街路樹に傷をつける場合もあります。交通量の多い道路では車の排気ガスによる影響も受けます。このような環境下では、いくら元気のいい青年期のプラタナスでも体力を充実させることはできず、毎年表面上では成長しますが、その細胞組織の充実度(健康度)は、人間の病気に例えれば糖尿病のような慢性病に罹っている状態ではないでしょうか。一方、公園樹は生育空間が十分にあるため枝葉を伸ばして健康度の高い樹木に成長しますが、無剪定では、樹冠の中枝は日照不足により枯死したり、公園の利用者による踏圧などで土壌の硬化が根の生育に悪い影響を与えます。また、住宅が隣接するような所では旺盛な成長のため、日陰や落葉への苦情が絶えないため、1~3年毎の剪定が行われるケースも多くあります。このように、街路樹プラタナスは植栽後40年を過ぎると樹勢も衰え始め、また、元気そうに見える公園樹も我々が思っているほど元気ではないのかもしれません。
通常、樹木の傷等から病原菌が侵入しても細胞の防御組織が働き、簡単には病気に罹らないと言われています。しかしながら平成18年の5~6月の低温時には、街路樹では炭疽菌が除雪作業により傷つけられた傷口や毎年剪定される剪定痕から、公園樹では剪定やいたずらによる傷ついた枝から侵入し、防御組織の衰えた細胞に難なく侵入・蔓延できたと考えられます。
別表のように、平成9年(1997年)は、芽出し時期の期間中ずぅーと温度が低い日が続き、平成18年に比べると平均で1℃近く低くなっており、炭疽病が発生するのに最適と思われる気温が続いたにも関わらず、炭疽病が発生していません。(もしかして発生していたのかもしれません。ただ、症状が軽度であったため我々が気づかなかっただけかもしれません。)
私は樹木のカビや病気については専門家ではありませんし、まして、炭疽病について深く調べたわけでもありませんが、その当時、ほかの多くの人よりプラタナスの炭疽病を見ており、その後もこの病気が気になり、ときたま公園樹や街路樹を見上げたりして炭疽病についての関心を持ち続けてきました。そのような中で思い浮かんだのが以下の考えです。 第2話へ(5月1日)

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